2006/09/29

邯鄲夢の枕

すっかり夕方になると寒い。
ちょっと前まで日が暮れると虫の声が賑やかだったけれど
この頃は、声が途絶えがちになってきた。
そろそろ静かな夜が来るだろう。

子どもの頃から好きだった「鳴く虫」にカンタンがいる。
夏が過ぎてフィロフィロと柔らかく寂しげな声が聞こえるようになると、
昔からなんとも切ない気持ちになる。

この「カンタン」という名前、子どもの頃は「簡単」?と
勝手に連想して妙な名前と思っていた。
どうやら「邯鄲」から来ているらしいと知ったのは最近のこと。


むかしむかしの中国。
唐の時代、邯鄲に向かう道中の宿で書生の若者と呂翁なる道士が出会う。
自分の境遇に不満をもつ書生の話を聞いた道士は、
枕を貸し与え、書生に勧めた。
その枕で寝た書生は、
良家の子女を妻に娶り、科挙に及第し、役人として栄華を極める
自分の一生を夢を見る、という話。
結局夢から醒めると、まだ黍は蒸しあがっていず
ほんのわずかの時間しか経っていない宿屋で
書生は人の一生の儚さ空しさを知る。


誰がこの小さな虫につけた名前かは知らないが
なかなか洒落ている。と思っている。


岩波文庫 唐宋伝奇集(上)
tosodenki.gif

その他いろんなところで読めるはず。

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