2007/08/04

3つの魔法三部作~天沢退二郎の本

ここ2、3ヵ月は妙に本が読みたくなってます。
どうも私の読書熱には周期があるようです。
昨年はほとんど読まずに過ごせたのですが、
そろそろ波が来ている感じです。

ひさしぶりに手にとった
『3つの魔法三部作』ですが、
あっという間に読んでしまいました。
勢いで持っている彼の本を全部読む。
なんというか、ひじょうにキブンに合ってました。

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はじめに彼の本に出会ったのは
『ネギ坊主畑の妖精たち』
をたまたま本屋で手にとった時からです。
全く知識のないまま衝動買い。
実はこの短編集、この流れの著作では最後尾に位置する
もので、断片的にこれより前に書かれた作品世界が登場します。
いわばスピンオフ物といった趣です。
はっきりとはわからないまま、奇妙な彼の作品世界に
惹かれました。
が、彼の作品は全て絶版。他の作品があることなど
意識することなく過ごしていましたが…。

ある日、私の本棚を見ていた(当時の)彼女が
「天沢退二郎」の名前を見つけて興奮していました。
なんでも中学生の時に図書館で彼の本に夢中になったとか。
この時初めて幻の『3つの魔法三部作』の存在を知ります。
しかし、この時は既に絶版で手に入れる術も無し。
この時は、まだネット環境なんてありませんでした。
後で知りますが、古本の市場では、
一冊数万円の値がついていたらしい。

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その彼女が貸してくれた
『光車よまわれ』
この時は、ちくまの文庫版でした。
初めて読む彼の長編は、想像したとおり
奇妙な読後感を残してくれる傑作でした。

こうなってくると喉から手が出るほど欲しくなる
長編三部作。
ネット環境ができて早速調べてみると、
どうやら復刊ドットコムで彼の復刊リクエストが
いいところまでいっているようです。
早速投票しました。
そしてついに…。

『3つの魔法三部作』は復刊されました。
もう、復刊決定のその日に予約注文しました。
10年近くも待たされただけに感慨もひとしお。
生きてて良かった、と本気で思う。

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  『オレンジ党と黒い釜』
manonuma.jpg
  『魔の沼』
orenijitoumie.jpg
  『オレンジ党海へ』
ここまでが三部作。
グーンと呼ばれる黒い魔法を使う勢力と
オレンジ党の子どもたちとの戦いを描いた作品です。
といっても欧米の善悪二元論ファンタジーとは全く色合いの異なる
作風に戸惑う人は戸惑うでしょう。
宮沢賢治、泉鏡花、といえば当たらずとも遠からじ。
彼は本来詩人なので、論理よりもイメージ、
まっとうな人が読んだならば「ワケわからん」で終わりでしょう。

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  『闇の中のオレンジ』
三部作から派生したエピソードを集めた短編集。
『ねぎぼうず畑…』とあわせて読むと、かなり作品世界が
広がります。

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  『夢でない夢』
ごく初期の短編集です。

彼の作品に特徴的なのがヒロイン。
魔法の力をもつ美少女(作品によって名前こそ違いますが)
が、奇妙な魅力を放っています。
物語は彼女達を軸に展開しますが、どの物語も
裏と表が入り混じった回転運動によって成り立っている
ような、そんな印象です。

ほとんどの作品がブッキング(復刊ドットコム)から
復刊されました。
こうして彼の作品が読めるなんて、幸せだなあ、と
読み返しながら考えていたここ数日でした。

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