2014/06/05

カゼ

久しぶりに仕事を早めに上がることができたので、
息子を近所の山に連れていきます。
風が強い日で、夕闇迫る森の木々が轟々と音を立てる様は
凄みがありました。
が、兄はひたすら森観察。
一方の弟は、「コワイ」としがみついてくるばかりで
ちっとも楽しそうではありません。


調子でも悪いのかと思ったら週末、カゼをひいたのか、熱を出しました。
釣りはお預けかな。


山がカゼで唸っているのを聞くと、遠野物語の八、「寒戸の婆」を
思い出さずにはいられません。





八 黄昏に女や子供の家の外に出ている者はよく神隠にあうことは他の国々と同じ。松崎村の寒戸というところの民家にて、若き娘梨の樹の下に草履を脱ぎ置きたるまま行方を知らずなり、三十年あまり過ぎたりしに、或る日親類知音の人々その家に集まりてありしところへ、きわめて老いさらぼいてその女帰り来たれり。いかにして帰って来たかと問えば人々に逢いたかりし故帰りしなり。さらばまた行かんとて、再び跡を留めず行き失せたり。その日は風の烈く吹く日なりき。されば遠野郷の人は、今でも風の騒がしき日には、きょうはサムトの婆が帰って来そうな日なりという。




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