世界中で妄想を膨らませる釣り人の変態的な要求に応えるべく
さらに膨大な数の釣竿というものが世の中に流れています。
変態の常として各々が頑固なまでのマニアックな性癖をもつ釣り人にとって
素晴らしい竿=名竿、といっても人それぞれです。
誰其れがコイツはスゲエよ、と言って手渡してくれても、ここは駄目、あそこも駄目と
難癖をつけて、持ち主の不興を買ったり、互いの趣味の悪さを内心攻めあったりするのが
オチで、そこらへんは、「おいしいラーメン」や「魅力的な異性」とも
共通する部分があります。
まあ、そんな変態の一人である私が出会った竿の数々の記憶の中で、
暗闇で小さく、ピカリピカリと輝くような竿があります。
まずひとつは、先日投げた、ダイワのアルトモアX-948です。
たぶん、このシリーズは、ダイワのフライロッド高級路線の最終世代になるはず。
釣具メーカーとしては、世界でも有数のダイワですが、
フライロッドの開発からは、すっかり撤退してしまったようで
今では廉価なモデルを残すのみ。ちょっと寂しいですが、要はお金にならないんでしょう。
そんなダイワの最後の本気モデルだけあって、なかなか凝った造りです。
ストリッピングは、たぶんセイモのSIC、オサレです。
特徴的なのがフェルールで、スピゴット(印籠継ぎ)とスリップオーバー(逆並継ぎ)の
ハイブリッド、というところ。
絶対緩まない、というのが売り文句だったように覚えています。
確かに抜く時大変です。
このフェルールを擦り合わせるのはもっと大変だったでしょう。
ブランクは、肉厚な感触で、中がみっちり詰まっているかのような
ソリッド感があって、しっとりと高級な曲がり。
ルアーロッドのブランジーノみたいです。
アクション、という分類でいくと、多分、プログレッシブ(負荷に応じてバット側に曲がりが入る)
だと思います。思い切り負荷をかけた時に漸進してくる曲がりが、何よりスムーズ。
竿の途中からペコペコおじぎをするような「プログレッシブアクション」の竿を何度か振ったことが
ありますが、それとは全く違います。
シュートするタイミングを投げ手が計りやすく、ループをコントロール
することができます。
そんなところにも作られた時の気合いと技術の高さを感じます。
決してガチガチではないのに、驚くほどラインが伸びてのはそのせいでしょうか。
マイナス点もいくつか。
リールシートは、安っぽくて、しかも使っているうちに必ずウッドフィラーが
はがれて一度は脱落します。(他の番手の同モデルもそうだったので)
ケースは、豪華な作りですが、しまうのが面倒で無意味。
いい竿なのに人気はなかったみたい。高い値段やその他理由は思い当たりますが
可哀そうです。そんな意味でも私にとって、日陰の名竿ということで。
もうひとつがSCOTTのF81/5、8ft #6です。
ずいぶん古いもので、1970年代半ば、40年近く前のものでしょう。
当時、グラスロッドのレジン(固める樹脂)としては、
フェノールとポリエステルしかなく、(現在はほとんどエポキシ)
フェノール樹脂を使っていたのが、ストーカーで有名なウインストンや
JETが看板モデルだったハーディーにブランクを提供していたケネディーフィッシャー、
こちらは、赤茶~焦げたような茶色(経年で変化)のブランクのみです。
ポリエステルの方は、様々な色が出せるかわりに
フェノールに比べて反発力が落ちました。
当時のスコットのブランク供給元は、Cal-Tackle社のポリエステルブランク。
(初期はLamiglas製もあり)
確かに持ってみると、ウインストンやハーディーのグラスロッドに比べて
重ダルな感触、サクサクとしたクリスプ感はゼロです。
それで、その欠点を補うべく行われたのが、よく知られている
小さなスリーブをブランクの内側に挿入する手法だったそうです。
結構、苦し紛れだったのかも。
昔のダイワのグラスロッドによくあった、飴色に透き通った綺麗なブランクも
ポリエステル樹脂のものだと思います。
最初手に取ると、重いしダルいしでどうなっちゃうんだろうと
思いましたが、ラインを通して振ってみるとそれがほとんど気にならず
ゆったりした振りなのに重くて力のあるラインが伸びていく様子に感心しました。
当時は、スコットの竿はキャスティングが売りだったようで、なんとなく
うなずけます。
WF6指定ですが、今ならWF5でピッタリかも。
ローンキャストより、断然、水辺で釣りをした方が
楽しい竿です。
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