2009/10/12
『デルスー・ウザーラ』
風邪をひいた上にひどい天気です。
晴れたと思ったら雷雨、さらに雹まで降って
そのセットを何度も何度も繰り返す情緒不安定な空。
出かける気にもなれず一家で缶詰生活をすることにしました。
先日の焚き火会で、そろそろ今年も読む頃かな、
と思い立った一冊の本があります。
私は、気に入った本を毎年毎年何度も読み返す癖があって、
この本は、そんな本の中でも格別のお気に入りです。
『デルスー・ウザーラ』
といえば、黒沢映画が好きな方は知っているかもしれません。
(私は映画は見てませんが)
私の持ってるのは、河出文庫の上下巻ですが、これは今は
絶版になったみたいで、今も読めるのは、昔からある東洋文庫版だけ
みたいです。
この本は、本来探検記として書かれたもので、
著者アルセーニエフの2回の探検、極東ロシアの
シホテ・アリニ山行と沿海州の海岸探索の旅についての記録です。
デルスーは、アルセーニエフが旅の途中で出会った猟師の名前で
この旅の大半をアルセーニエフと一緒に過ごすことになります。
北海道の真向かいの自然についての記述が興味深い
探検記として読んでももちろんいいんですが、
何よりデルスーの人柄や振る舞いがこの本の魅力になっています。
当時はガスストーブなんてありませんから、当然焚火は、旅の必需品です。
夜は風邪がふいて寒かった。薪が足りないので大きな焚火をおこすことができず、それでみんなはこごえて、ほとんど眠れなかった。どんなに外套にくるまっても、冷たい風がどこかにスキマをみつけて、肩を、脇腹を、背中を冷やしにきた。薪もわるくて、パチパチとはじけ、四方八方へ火の粉をちらばした。デルスーの毛布が焼きこげた。私はうとうとしながら彼が薪に悪態をついているのをきいたが、彼は彼らしく薪を「わるいひと」と呼んでいた。
そこかしこに見られる焚火の記述がまた妙に印象的です。
私にとっては、いついかなる時に読んでも面白いこと
「生涯保証付き」の一冊なんです。
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